『それから』夏目漱石(新潮文庫)

本筋とずれるんですがいちばんの感想は「働けやコラ」でした。主人公は高等遊民というものらしいですが、時代が違うから事情が違うのはわかっているのですが、それでもうきーってなった。親に生活費を全部出してもらっておいて人にお金を貸すっていう論理がわからん。それでいて親の言うことを聞くわけではなく、仕送りがもらえなくなったらどうやって生活していけばよいのか悩む。ぐだぐだ悩んでるくらいなら働けよと。働かない理由について「僕が悪いんじゃない。つまり世の中が悪いのだ」っておいおいと。

文庫の裏にある煽り文には「破局を予想しながらもそれにむかわなければいられない愛を通して明治知識人の悲劇を描く」とありますが、それも元はといえば自分が蒔いた種であって、中途半端にいい人を演じて女より友情をとるみたいなことをして、でもやっぱり好きだからって何年も後に思い直す迷惑な奴。三四郎はまだ若い坊ちゃんだし美禰子みたいな魔性系の女が出てきたら巻き込まれるのも納得するけれど、『それから』の主人公の代助はもういい年だし女主人公の三千代ってなんかパッとしないしさぁ。…って好きな人、ごめん。

あと終わり方がすごい唐突で、これからいよいよクライマックスかぁと思ったとたんに終わっちゃってスターウォーズのエピソードVかよ。って感じで。思わずその足で『門』を買ってきちゃったし。なんか個人的には、夏目漱石の本ってとかく主人公に対していらいらしがちなんですが、それでも言葉遣いとか文体とかが気持ちよくて読んじゃうんだよなぁ。